製作者の声

シルク薬効手染

小学生の頃、9才ぐらいだったでしょうか?偶然、TVでおばあさんが機織りをしておられる場面を見たのです。今で思うととても不思議なのですが、子供心に、「自分は大きくなったらこれをするんだ..。」って思ったんです。 そして中学1年の時、本屋さんで「草木染め」という一冊の本を手に入れました。その本をむさぼり読みました。 その本により始めて染めという事を知ったのです。

それから暫くして、やはり中学生の時に、倉敷の美観地区を歩いていたら、ある場所でバッタン、バッタンという音がしたのです。 とても気になりその場所を覗きましたら、なんと機を織る音だったのです。倉敷民芸館の中にある染め織り研究所という所でした。

直ぐさま、「私も入れてください。」と言ったのですが、中学生という事で断られ、高校生になったらいらっしゃいと言ってその場は帰させられました。そして、高校2年生の時改めて願書を出しに行ったのです。でもその時は願書は受付けのみで、ようやく入れてもらえたのは20才の時でしたね。(笑)

そこで約1年間機織りの勉強をさせていただきました。機織りは材料である糸を染色する事から始ります。始めて草木染めを習いました。 とても充実した日々を過ごしました。織りの技術的なことだけでなく、民芸運動の作品や「実即美」という考え方にも触れ、現在の私の「もの」に対する基本姿勢を学びました。

1年の研修生活が修了する直前、突然、父が亡くなり、急遽父の仕事を手伝わなくはいけなくなりました。機織りどころではなくなっていました。 そんなある日、私の所に、修了直前に機大工さんに注文していました機織り機が私の元に届いたのです。そして長い間、部屋の片隅にずっと眠っていました。 やっと念願の機織りが少しづつですができるようになたのは、気がつけば5年以上の月日が流れていました。その間に、主人と出会い結婚しました。

我が家に出入りする友人の中にとても健康について詳しい方がいました。元々、私は子供の頃から身体が弱く、健康という言葉には敏感に反応していましたね。その彼がいろいろな知恵を私に教えてくれたのです。その中に冷え取り健康法というのがあり、シルクと綿、と数枚の靴下を重ねてはく事で、体内の毒素が排出されるという事を教えてくれました。

今でこそ、5本指靴下はポピュラーになって来ましたが、その当時はなかなか手に入りませんでした。それでも何とか探し、早速自分達で試してみたのです。今のように種類がないので、最初は白いシルクと綿靴下を穿いていたのですが、どうしても黄ばんでしまいます。では、その白い靴下を染色しようと思い、近くの山でいろいろな草木を探しそれで染めてみました。

最初の頃は、どんな色に染まってもとても嬉しくて、どんどんいろいろな物を染めてみました。 でも暫く染めていると、同じ染料の筈なのに今までくすんでいた色がどんどんクリアーな色になっていったのです。 どの位の温度にしようかな?舐めてみます。うん美味しい。じゃあ、ここで布を入れようね。そんな具合に、染めと対話している自分に気がつきました。

その過程を通じて沢山の事を教えてもらえました。勿論私だけでなく、そんな過程で出来上がった物に触れた友人たちから教えて頂いたことも沢山あります。 例えば、種類の違う染めたショールを頭から1枚づつ被ってもらいます。すると、その人のエネルギーと草木のエネルギーによって顔の表情が変わってくるのです。変わりかたは人それぞれです。いろいろな色の物を保織られるととても良く解ります。ご自身にぴったりとあった物に出会わわれるとすぐ解ります。とてもきれいにエネルギーが循環してゆくのが見ている側も、ご自身も解るからです。とても落ち着いて優しい表情になられます。「柔らかく包まれ、とても懐かしく感じます。」とおっしゃいます。

今までの色の概念とは全く違ったものです。自分では似合わないと決めつけておられた方でも意外な発見に驚かれますね。 様々な草木の種類によって出てくる光りとエネルギーって違うのです。染めのエネルギーを通じて様々なものを写し出してくれるのです。

私は色は光だと思っています。

そして、人も光でありそして一人一人がたくさんの色を持っていると思っています。その色が少々足りなくなった時、誰かの優しい言葉(ことのは)や気持ちにより、その時必要な色をいただいて補い合いをしてバランスを取っているのだと思っています。

身につけられた方々が変化をしていかれる様が嬉しくて、そんなものが作れるようになると、とても嬉しくてどんどん染め、どんどんプレゼントしました。 見せびらかせたかったのかも知れませんね。そんな事をしている内にある方から展示会をしてみませんか?とお誘いがあったのです。また、他の方からも、是非お店で売りたいと、お話しがくるようになりました。 好きで染めていたものが商品として売れる。とてもびっくりしました。

今は、7種類の薬草・・・
茜染め (落ち着いた赤・透明感のあるピンク)浄血作用
うこん&きはだ染め (鮮やかな黄色・中国皇帝の色)消化器調整
びわ染め (重厚なオレンジ色・複雑なレンガ色)免疫UP
くす染め (光るこげ茶色)ホルモン調整
丁字染め (緑がかった黄土色・香り染め)鎮痛作用
あい染め(さわやかな空色)
を基本の染料として、5本指靴下・ショーツ・シャツ・など下着類、スカーフ・シーツ・布ナプキンなどを染めています。

素材はシルクはもとより、オーガニックコットンなども染めています。頭の中にやりたいこと、アイデアはいっぱいですが、ありすぎて空回りすることもしばしばです(笑)。

仕事として段々ニーズが広がり、主に代理店を通じて商品を卸していました。倉敷にアンテナショップを構え1年半ほどやり、そこでも様々な気づきがありました。その後、 自宅と工房がある一角にショールームを作り、現在に至っています。 辺ぴな場所にもかかわらず、わざわざ遠くから足を運んでくださるお客様に感謝しています。

これからも、自分達にとって気持ちいいものを、着たい物を提案したいと思っています。 これからも、まず私自身がワクワクできるようなものづくりをしてゆきたいと思っています。 丁寧に丁寧にやってゆきたいと思っています。

「あるでばらん」中村由産

▼ アルデバランのコンセプト